龍の牙が奏でる
もうひとつの物語
​日はまたる​
静寂のに浮かぶ紫の月
を失った夜を泳ぐ蛍のように
街の灯りだけが生活感を残し
​夜明けを待って揺れている
 
年輪を重ねた大木のように
深い皺を刻んだ喉で唾を飲み
老人は重たい口を開く
「空が何か言いたげだ。
普段うるさく鳴きよる鴉達も
声をったようだの。」
風車を空に向かって伸ばす少年
「全然風も吹かないや。
近頃は花も咲かないし
土には虫たちも見当たらない。
つまんないの。」
名前のない星がまたひとつ
絶え間ない漆黒の空に
飲まれて消えた
「ねぇ。僕。風を探して来るよ。
​きっと風が光を
運んでくれると思うんだ。」
さっきまでそこにあった月
夜明けを待つ事すら許されず
​居場所を失くし闇に落ちる
静寂の中 少年の足音だけが
​消える事なく明日を見ていた
 
物語は少年の足音と共に
静かに幕をける

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